平腹双口吸虫
盲腸に寄生、牛や山羊を終宿主とし中間宿主は双口吸虫(1,2胃に寄生)と同じ。
病害は特になく、特定地域に生息。
雌雄同体で後吸盤により腸壁にくっつき、口吸盤で腸内容などを食べる。
吸着による炎症が動脈周囲の神経に影響を与えると、腸の蠕動などを抑制して、重積などになる可能性がある。
(症例1)
1993年に鹿児島県内で800匹の濃厚感染例。盲腸に白い斑点状の寄生の跡がある。
この症例では、餌に田んぼのあぜの草を食べさせていたため、セルカリアを経口的に摂取したと考えられるが、中間宿主のヒラマキガイモドキが見つからず、感染経路は判明しなかった。
(症例2)
薩摩町にて飼養していた3歳、雌の黒毛和種牛。子宮に腫瘤があり剖検されたが、その盲腸から平復双口吸虫が311匹見つかった。
(症例3)
薩摩町にて飼養していた3歳、雌の黒毛和種牛。創傷性胃炎と診断され剖検。
顕著な全身性の浮腫、横隔膜と心臓の癒着、ロデシア眼虫、腸結節虫などが見つかった。
肝蛭の規制も見られ、胆管内で死んで砂粒状となっていた。
盲腸には平復双口吸虫が240匹寄生していた。吸盤で強く食いついているため水洗いしても流れない。
今後のテーマ
中間宿主である貝の生息実態
感染数と糞便検査の関係
平腹双口吸虫に対する対策
保虫牛への駆虫
中間宿主の撲滅(不可能?)
メタセルカリアの感染防止
(河川、水田での放牧禁止。水面下5cm以内の部分を切り捨てて餌にする)
虫卵の散乱防止
(糞便の発酵による殺卵。牛舎、堆肥場からの汚水流出防止)
豚の細剄嚢虫
肝臓に寄生する胞状条虫の嚢虫。
漿膜面にくっついて、半透明のシストを作る。多数感染で肝障害や急性腹膜炎。
嚢虫の原頭節にあるの鉤の数、形によりどの嚢虫かを特定できる。
犬(終宿主)に捕食させる 糞便中に片節が排出され、感染が確認。
チョウセンイタチのマンソン弧虫(マンソン裂頭条虫のプレロセルコイド)
小腸に寄生し、普通は脂肪組織と区別がつかない。
ケンミジンコが中間宿主で、ほかの動物や人間にも感染する。
これも終宿主である犬に捕食させると、駆虫後には親虫が排出された。
アマミノクロウサギの豆状嚢虫
豆状条虫がげっ歯類(中間宿主)の腸間膜、大網でシスト(半透明、袋状、液体を含む)をつくる。
終宿主である犬に食べさせると糞便中に虫卵を排出した。
アマミノクロウサギの数が減っていることに関与の疑いもある。
肥育牛における肝蛭症発症例
農場:肥育牛約170頭、母牛約30頭、およびその出生子牛を飼育(半一貫生産肥育農家)
飼料 生産牛:自家製サイレージ
肥育牛:購入チモシー、輸入稲ワラ、自家製配合飼料
肥育素牛の導入先は、主に揖宿、姶良、さつま市場
経過:6月期のMPTにおいて肥育7〜8ヶ月をピークとするGGTの上昇が見られた
(GOT上昇,TP減少もあった)。
これに対応して飼料の腐敗などの可能性を指摘し、フジックス投与の指導を行った。
10,11月のMPTにおいて、前回高GGTがみられた個体では改善が見られたものの、前回同様肥育7〜8ヶ月の牛群においてGGTの上昇(500〜800)がみられた。
同時期、肥育牛群において食欲不振を主訴とする下痢症が発生し、そのときの糞便検査で肝蛭中卵を確認。続いてほかの肥育牛からも肝蛭虫卵を確認。肝蛭症としてファシネックス投与を指示。
その後、牛舎周囲(ウォーターカップの水漏れや、雨水によりできた水溜り)から右巻きの淡水巻貝を確認。牛舎内およびその周囲における肝蛭の生活環を推察。周囲の清掃を指示した。
教訓:固定観念を持っていては診断の妨げとなる。
牛舎内および周囲の清掃は大切。
Discussion
糞便検査は大変なので、塗沫をひいて好酸球の上昇を基準にすれば?
肝蛭からエーテルで抽出、もしくは生食でつぶして乳剤にしたものの上清を用いて皮内反応を行うと有効。20分程度で反応が得られる(安田先生)。これと同じ方法で、膵蛭の診断も可能。
......浜名先生(鹿大、家畜臨床繁殖学研究室)
..先天異常
98年の大発生よりしばらく見られない中枢性の異常を起こすウイルスによる先天異常の子牛が、最近見られているのでその数例を紹介する。
1) 2571:溝辺町より搬入の生後3日の黒毛和種。雄。初産。
アカバネのワクチンは不明。
剖検結果;胸、腹腔臓器は正常。
大脳が消失し硬膜のみ。アンモン角はある。小脳は正常。
→アカバネ
2) 2573:溝辺町より搬入の雄の黒毛和種。起立が不能。ワクチン摂取あり。
剖検結果;大脳が完全に消失。アンモン角もない。小脳は亀裂が入り小さい。
脳幹部の形成不全。延髄、脊髄は正常。
3) 菱刈町より搬入の黒毛和種牛。起立可能だが旋回運動をする。
剖検結果;大脳、アンモン角が完全に消失。小脳は小さい。
脳幹部の形成不全。延髄、脊髄は正常。(2例目と同じ)
中枢異常による分類
・ アカバネウイルス感染
大脳半球欠損。小脳は健常。
・ チュウザンウイルス感染
大脳欠損。小脳の萎縮。(水無脳症)。脳幹部は残っている。
後弓反張、旋回運動などの神経症状を見せる。
・アイノウイルス感染症
大脳は健常だが小脳は萎縮。脳幹部も矮小化。脊髄にも影響が及ぶ。
斜剄、関節湾曲、脊柱湾曲がみられる。
今回見られた2例(症例2,3)は異常の3種類の中枢異常が混在したタイプであり、アカバネが変異したのか、あるいはまったく新しいウイルスなのかはまだわからない。
今後3から5月に発生が推察されるため注意が必要。
さらに、単体フリーマーチンを疑われた症例、および先天的な食道アカラシアの症例を別に紹介する。
牛の過剰排卵誘起における卵胞ホルモン剤の前処置
1)卵胞ホルモン剤投与と優勢卵胞(DF)、新卵胞波の関係
E2剤注射 血中P4濃度低いとき:DF抑制しない 血中P4中濃度異常のとき:DF発育抑制・退行 新卵胞波発現
外因性P4剤投与 約4(3-5)日後
2)試験1
区 |
P4アナログ移植 |
E2剤 |
FSH剤 |
PG-A |
n |
回収卵数 |
受精卵数 |
正常胚数 |
|
|
5mgIM |
|
0.5mg |
|
|
(率) |
(率) |
A |
ー |
ー |
d8ーd12 |
d10ーd14 |
18 |
8.9 |
6.0(68%) |
3.9(44%) |
B |
d0ーd7 |
ー |
d5 |
d7 |
19 |
12.4 |
7.5(60%) |
4.4(35%) |
C |
d0ーd7 |
d1 |
d5 |
d7 |
19 |
13.2 |
11.2(84%) |
6.6(50%) |
d0=排卵日またはP4アナログ(Syncro-Mate B) 移植日
3)試験2
区 |
CIDR |
E2剤 |
P4 |
FSH剤 |
PG |
n |
回収卵数 |
受精卵数 |
グレード1 |
グレード2 |
|
|
5mgIM |
100mgIM |
|
|
|
|
|
|
|
A |
d0ーd7 |
ー |
ー |
d5とd7 |
d7 |
17 |
6.1 |
4.1 |
1.5 |
1.6 |
B |
d0ーd7 |
d0 |
d0 |
d5とd7 |
d7 |
18 |
9.4 |
8.1 |
3.7 |
1.6 |
C |
d0ーd7 |
d1 |
ー |
d5とd7 |
d7 |
16 |
5.8 |
3.2 |
1.4 |
0.8 |
4)
試験3
▲
↑
▲:E2剤5mgまたはゴマ油IM
FSH:アントリン総量20AU(5,5/3,3/2,2)
↑:クロプロステノール0.75mg
黒毛和種未経産牛における過剰排卵誘起成績
|
頭数 |
|
|
採卵成績 |
|
|
|
|
黄体数 |
回収卵数 |
正常胚数 |
GOOD胚数 |
正常胚数(%) |
イ.対照区の回収 試験区 |
9 |
16.0±7.7 |
11.3±6.4 |
6.4±4.9 |
3.8±3.0 |
56.3±30.2 |
卵数10個> 対照区 |
9 |
13.6±6.5 |
4.7±2.5 |
1.8±1.5 |
0.3±0.5 |
30.0±24.3 |
ロ.対照区の回収 試験区 |
7 |
21.0±7.9 |
13.0±7.1 |
8.0±6.5 |
4.1±4.6 |
61.7±30.0 |
卵数10個> 対照区 |
7 |
18.0±6.3 |
13.1±3.6 |
9.3±4.7 |
4.4±2.9 |
68.4±23.2 |
計 試験区 |
16 |
18.2±8.2 |
12.1±6.8 |
7.1±5.7 |
3.9±3.8 |
58.7±30.2 |
(イ+ロ) 対照区 |
16 |
15.5±6.8 |
8.4±5.2 |
5.1±5.0 |
2.1±2.8 |
46.8±30.6 |
試験区:CIDR+E2+FSH/PG
対照区:CIDR+FSH/PG
5)試験4
区 |
CIDR |
E2B剤 |
FSH剤 |
PG |
黄体数 |
回収卵数 |
正常胚数 |
|
|
5mgIM |
|
|
|
|
|
A |
d0ーd12 |
ー |
d10 |
d12 |
7.8 |
6.3 |
3.7 |
B |
d0ーd12 |
d5 |
d10 |
d12 |
9.1 |
7.2 |
3.7 |
6)試験5
▲ ? ↑ ▲
E2B1mg E2B 0.5mg
▲:E2B剤をIM
?:FSHアントリン25AU/PVP+5AU/生食
↑:クロプロステノール0.75mgIM
区 |
E2B剤 |
|
黄体数 |
回収卵数 |
正常胚数 |
遺残卵胞数 |
|
d5 |
d13 |
|
|
|
|
A |
- |
- |
8.6 |
9.3 |
4.7 |
10.9 |
B |
1mg |
- |
A区と差なし |
A区と差なし |
7.7 |
|
C |
- |
0.5mg |
10.1 |
12 |
5.1 |
11.6 |
D |
1mg |
0.5mg |
|
|
7.1 |
5.4 |
7)試験6
△ △ ? ↑
△:E2B剤をIM
?:FSHアントリン25AU/PVP+5AU/生食
↑:クロプロステノール0.75mgIM
区 |
E2B剤 |
頭数 |
黄体数 |
回収卵数 |
正常胚数 |
正常胚率(%) |
|
d5 |
|
|
|
|
|
A 対照区 |
- |
36 |
8.3 |
4.9 |
2.4 |
48 |
B 試験区 |
1mg |
18 |
9.4 |
6.4 |
4.7 |
73 |
C 試験区 |
5mg |
18 |
5.2 |
4.4 |
0.9 |
21 |
連続過剰排卵処置にE2剤を前処置する場合、CIDR挿入後5日目にE2B1mgを注射することで、投与後2日目以降の血中E2濃度低下時に、小・中卵胞数が増加し、採卵成績の向上に有効である可能性が示された。
質議応答
*柳療法について*
Q 以前お話した子牛について、柳療法をやってみたらよかったのではな
いですか?
A その通りですね、忘れていました。先生は親牛に柳療法をされていたので
すよね。でも子牛にも有効かもしれない。
Q もう一度コツを教えて下さい。
A 分娩から2日たっても胎便が出なかった。薬を使っても血便しか出ず、哺
乳しても飲めない子牛がいて、その子牛に柳を順気にいれました。
朝入れたら、夕方乳を飲むようになりましたよ。
Q もう一度テクニックを詳しく教えて下さい。
A ロープ等で口を開けさせます。上唇をあけると50cm?1mぐらい入りま
すが、副鼻腔の方へ入ると炎症をおこすので注意して下さい。
生まれてすぐなら1?2cm押し込んでみて、手を入れてがさがさしない
所まで入れます。子牛が下痢の時には、穴が大きくて、すいすい入ります。
健康な牛ほど穴は小さいです。簡単だし、農家さんも自分でできますよ。
Q どの方向にいれるのですか?
A まっすぐです。
Q 左右両方?
A 両方です。取らずに、入れっぱなしにします。1ヶ月くらいすると、柳は
なくなっています。乳房炎で廃用にする牛に大きいのを入れましたが、屠
場で見ると断面には黒い点が残るのみでした。マクロファージの貪食作用
でなくなるようです。副作用は全くありません。やらないよりはやってみ
たほうがいいので、死ぬ前にだまされたつもりでやってみて下さい。
慢性鼓張症に効きます。肥育の中間の“食い止まり”でも、食欲が出てき
て肥育効率があがります。
中国には、順気に鼓脹症のツボがあります。ツボを刺激しているのではな
いでしょうか?なぜかは分からないけれど、発生の途中でそこだけが残る
のではないかと考えています。
? 試してみたら良く効きましたよ。柳がなくて1ヶ月探しました。
幅1mm?3mm、長さ2cm?30cm(成牛)がよいみたいです。私は、
無理せず入る所まで入れました。症例は3例ありましたが、みんなある程
度効果がありましたよ。
Q 潤滑剤は使いますか?
A いりません。牛の唾液で十分です。
Q 14?15年前、竹でこの方法が流行りました。竹と柳ではどっちがいい
ですか?
A 竹は繊維が強くて弾力性がない。弾力性がないと、穴の外に出てしまいま
す。柳は木質自体が柔らかいから、柳の方がよいでしょう。ただしいくら
でも入るので、気をつけて下さい。長過ぎると副鼻腔に出てきて、害に
なります。
柳は成長が早いからいいですよ。お金もかからないし。全薬さんが、ビニ
?ルの管を売り出したことがあるけれども、効果はいまいちでした。吸収
されて穴が埋まることに効果があるのだと思います。
* 寄生虫について*
Q 寄生虫の見分け方が分からない。何か良い方法はありますか?
A 寄生虫には地域性があります。自分が見つけたものを写真に撮って、カラ
?アトラスを作るといいですよ。
Q コクシと乳頭糞線虫が出ます。さとうきびが雨にぬれたものを牛舎の下に
ひくと、乳頭糞腺虫が大発生しました。
A 乳頭糞腺虫は人でも問題になっています。特に南国で流行っていますね。
感染するのは雌のみです。外界で乳頭糞腺虫が住みやすい条件が整ってい
れば、外界で雌雄になり、敷きわらの中に虫卵がどんどん増えます。牛に
駆虫薬を投与しても、外界で増えてしまうのです。
Q 牛が死ぬこともありますか?
A 大量寄生すると死にます。ぽっくり病と呼ばれています。蹄から主に感染
します。
? なかなか蹄まで見ませんね。今後気をつけます。
農家さんでさとうきびを牛舎のしきりにしているところがあります。
やめるように注意してもなかなか聞いてくれません。
Q 山羊も飼ってらっしゃいますか?
A 飼ってる所もあります。
A そこは、山羊にも感染していますよ。
それと、注意をしなければならないのが膵蛭です。虫卵が小さいので見つ
けにくいのです。感染していても出てきたり、来なかったり。何回か検査
してみる必要があります。
駆虫薬としては、プラジクアンテルが効果的ですが、大動物用のものが市
販されていません。小動物用ではドロンシットですが、牛に使うとなると
費用がかかりすぎます(1?2万)。魚用のものを使っても良いのですが...
(違法なので内緒で使って下さい。)
Q ニトロオキシニルを使ってはどうですか?
A 強い薬なので、牛が死んでしまうかもしれません。弱った牛にあまり無理
なことはさせないほうがよいですね。
Q 膵蛭の虫卵の特徴は?
A 黒っぽい虫卵です。糞便中のトリプシン検査をするとよいですよ。
糞便を重層に溶かしてそれをレントゲンフィルムの上に垂らします。
膵蛭がいなければ、糞便中にトリプシンがでてきてそのトリプシンがフィ
ルムのゼラチンを溶かすので、フィルムが透明になります。ある程度の
診断の目安にはなりますよ。
Q 一番かかりやすい年齢はいつですか?
A 10?12ヶ月が一番かかりやすいですね。おもしろいことに一番力の強
い牛が先に死にます。えさを食べる量が多いので、メタセルカリアへ感染
する率も高くなるのです。
Q 種子島でよく発生します。
A まとめて送っていただければ運送代だけで検査します。
* 早期離乳について*
Q 早期離乳哺育をしている農家があります。3日間母乳を飲ませて離します。
20日間ぐらいまでは元気に育つのですが、それ以降低体温(37.0℃以
下)と下痢が続きIgG値も低く(10mg以下)、ほとんど死んでしまいま
す。移行抗体が消失する時期で、初乳不足であるとわかってはいます。
それでも、そうなった場合何か良い対処法があったら教えてもらいたいの
ですが。
Q 市販の乾燥乳は使わないのですか?
A 産まれてすぐに、Bovine Pet Start を1.8?強制的に飲ませます。その後、
初乳を3日間飲ませることで、かなり少なくなったのですが、やはりまだ
死ぬ子牛もいます。
Q 血統値はどうですか?
A 血糖値は正常ですが、TPは低下しています。
A 参考としてですが、昔、丸山ワクチンというものがありました。
癌に効く薬で、私が黒色腫(メラノーマ)に打つとすぐに消えました。
結核菌のマクロファージの活性を高めることにより、免疫機能が高まりま
す。二次的な効果が期待できると思います。
Q まだ買えますか?
A 先生の所に行って、証明書をもらわないといけません。
Q 保温マットの使用についてはどうですか?
A 弱った牛ほど保温マットで滑りやすいです。敷きわらをひくと、低温やけ
どは防げますが、敷きわらを食べてしまいます。
A 私は、ドイツから輸入した保温マットと投光機を使っています。
暑くなったら牛は自分で移動します。
Q 一度悪くなると何をやっても死んでしまいます。補液をしていても、切る
とだめになります。だんだん衰弱して死亡してしまいます。
発育は正常なので、症状がでるまでは気づかないのです。
A 免疫賦活剤のリぺルコールやレバミゾールはどうでしょうか。
A リぺルコールは時間がかかるし、レバミゾールは毒性があります。
ビタミンAとEも免疫力を高めますが、すぐには効きません。
A 参考としてですが、サンダイコー、エーザイさんで作っている、On
Power
(活性卵白)を使って乳房炎牛の乳汁中の体細胞数を減らす試験をしてい
ます。これを応用できないでしょうか?On Powerにナットウ菌やビタミン
を加えて使っています。マクロファージの活性が高まって、体細胞数が半
分ぐらいになりますよ。
Q 治療をしながらですか?
A 菌の検査をしながらやっています。On Powerは10kgで1万円程度です。
?早期離乳はやめていく人が多いので、早期離乳が良いのか悪いのかという問
題があります。離乳直前で重症になることもあります。経済的には3?4ヶ
月飲ませて離乳させると少なくなりますが早期離乳代として5?6万かかり
ます。統計的には早期離乳は平均価格以下であることが多いです。受胎率
の上昇を目的として早期離乳をおこなっているのに、必ずしも受胎率が良
いというわけではない。早期離乳に関してはもう一度検討が必要ですね。
Q 早期離乳について、1週間母乳を飲ませたデータはありますか?
私が受け持っている早期離乳農家さんはうまくいっています。繁殖成績も
上がっているし、経費は1頭1.4万円程度です。4?5万はかからないで
すよ。3日、1週間、1ヶ月では、早く離した方が結果は良いです。
病気に関するデータはもっていないのですが。
A 長く母乳を飲ませると、哺乳ビンのミルクを飲まなくなります。
ミルクをやっても水とえさしか食べないんです。ヘモとゴシコンを打つと
劇的に下痢と肺炎が改善します。呼吸器病の改善はされます。
Q 体温が下がった時、36℃で半日おくと、肝臓と腎臓のダメージはどれく
らいあるのでしょうか?
A はっきりとはわかりません。体内温度は上がっているかもしれないし、体
温が下がったというだけで組織がダメージをうける訳ではありません。
? 子牛の下痢症についてですが、血液検査ではGOT、GPTが少し高く、血
糖値は20?30と低いものがいます。乳頭不耐症と診断して、ガランタ
?ゼを5g投与しました。今のところ生きています。体温も低いです。
乳糖を分解して体内に取り込めないのが問題なのではないでしょうか?
Q 月齢は?
A 2週間前後です。下痢が改善し、よくなったかな?っていう時にひょこっ
と死ぬ。剖検しても何もでないし、細菌や寄生虫はいません。
Q 自然哺乳?
A 最初は自然哺乳です。下痢がでたら離します。一日ミルクを切って、サン
ダイコ?の薬をやってミルクをやれば飲みますよ。どうしてもダメな時は
黒砂糖を50g溶かすと良いです。
? 今までのデータをまとめてみます。(次回までの宿題)
* CIDRについて*
Q 川口先生のCIDRの実験についてですが、プリントの2-
7)試験YでCIDR
を入れて5日めにEを投与していますが、CIDR挿入後、すぐにEを投与
していもいいのですか?
A この実験ではたまたまそうしただけです。
CIDRを入れて翌日にE、5日後にFSHでももちろんよいですよ。
*分娩について*
? 先日お産でのできごとなのですが、予定日を3日過ぎていて、破水もとっ
くに過ぎている牛がいました。帝王切開では費用がかかるので、切胎して
出した所、奥にもう一頭、雄の胎子がいました。奥の子は助かったから良
かったものの...早く気づけば2頭とも助かるかもしれませんでした。先
入観をもってはいけませんね。反省しました。
* 創外固定について*
Q 私は創外固定のための道具を持っていないのですが、何か創外固定のコツ
があれば教えて下さい。
A 骨折して、皮膚が破けた場合に創外固定をします。細菌感染を防ぎ、きち
んと洗浄、処置するためです。
皮膚が破けていないものはギプスをします。
A スライドででていた金属パテよりも、歯科用のリジンがよいのでは?
リジンを水道のホースに流し込み、両方から押さえます。
Q 骨への、ハーフピンの刺し方のコツはありますか?
A 筋肉のない所に、一気に刺します。じわじわやるのは良くないです。
? 我々は、BSEについて共通の認識を持っていた方がよいですね。
鹿大ではBSE研究所を設立し、肝付での講演などもしています。
鹿児島では、徐々に消費量が戻ってきているが、都会では焼肉屋
で牛肉をおいていないところもあるそうです。
? 一番困るのは、外見的な診断の基準がいまいちあてにならない所
です。血清があればはっきりしてよいのですが。
農家さんは、廃用牛にまで種付けをはじめました。消極的な姿勢
で、新牛の導入もなかなかできない。どうすればよいでしょう?
A 口蹄疫や炭疽の方が恐いのですが、なすすべがあります。BSE
は、我々ではどうしようもありません。消費者が食べてくれる
のを待つのみですね。
山口大学農学部獣医学科家畜外科学教室 田浦保穂
<運動器系疾患>
狭義の運動器系疾患
@ 骨格系
A 筋・腱・靭帯系
広義の運動器系疾患
@ 骨関節系疾患
A 筋・腱系疾患
B 神経系疾患
C その他
<跛行>―――部位の特定―消去・加算―診断
@整形外科か?非整形外科か?
A骨格が未熟な動物の跛行
B骨原性跛行
C関節原性跛行
D免疫介在性関節炎
<脳脊髄に異常はないか?>
@大脳・視床:旋回運動、盲目、倦怠感(アカバネなど)
A小脳:歩行困難、震顫
B前庭:小さく旋回、斜頚、眼震、
C脳幹:神経がまとまって通っているライフライン、BSEはここにたまる
D脊髄前部
E部頚髄〜胸髄前部
F部胸髄〜腰髄前部
G腰髄以降〜
脊髄の異常による臨床所見の特徴
上位運動ニューロン(UMN)の異常→ケイセイ麻痺(つっぱる)
下位運動ニューロン(LMN)の異常→弛緩性麻痺(脱力)
損傷部位 |
前肢 |
後肢 |
D頚髄前部 |
UMNS:つっぱる |
UMNS:つっぱる |
E後部頚髄〜胸髄前部 |
LMNS:弛緩 |
UMNS:つっぱる |
F後部胸髄〜腰髄前部 |
正常 |
UMNS:つっぱる |
G後腰髄以降〜 |
正常 |
LMNS:弛緩 |
ナックリング:通常脳灰白質から弛緩命令がでるが、これが何らかの原因により阻害されとナックリングが起こる。ただし完全にやられると脱力する。
脊髄分節と骨の分節の位置は異なっており例えば犬では第1,2,3仙髄は第5腰椎に入っている。
大脳がほとんどなく膜状であっても、小脳、脊髄があれば歩行できる。しかしMダックスなどで最近多い水頭症が悪化し脊髄空洞症になると歩行できなくなる。つまり歩行には大脳でなく、小脳・脊髄が重要。
また目、鼻、耳での感染は脳底のほうに行きやすいので注意が必要。
<MRI>
牛の継続的なMRI検査を行った。それによると外見上健康な牛における下垂体異常所見が検出された。牛においては潜在的下垂体疾患が存在している可能性がある。
材料:は外見上健康牛255頭が用いられた。
方法:MRIをとる
結果:下垂体嚢腫の見られた例からは多くの菌が分離された。しかしそのようなものも神経に当たらなければ外見上正常な牛と変わりはない。下垂体病変検出率はホルスタインの方が高かった。これは搾乳により下垂体が刺激されるのが原因か?
<症例>
小脳形成不全と脊髄内出血が生前確認された起立不能牛
黒毛和種、雌、7日齢
症状:左右後肢伸長、右前肢伸長、膝蓋腱反射亢進→UMNS
意識正常、脳症状無し
治療としてクモ膜下腔へのデキサメサゾン投与、針治療→立たない
血液:CPK 81 Ca2+ 13.1 とこの二つが高かった。
脳髄液:CPK 1016 高すぎるため頭、脊髄への異常がかんがえられる。
MRI:大脳は異常なし、小脳において奇形らしきものが認められる。そのため脊髄もとってみたところ血腫らしきぞうが認められた。
剖検:小脳虫部が変形、L3~L4に出血病変
組織学的:脊髄においてプルキンエ細胞の変性と顆粒層の脱落がみられた。
結果:左右後肢の伸長はL3~L4の占拠病変による。右前肢の伸長はシッフ・シェリントン徴候の可能性(上行性に悪くなること)進行の早い神経症状は急性の出血による。小脳の異常は原因不明
馬の腰ふら。首の後ろをやられて後肢がナックリングする。前肢のほうが後肢より大事。そのため後肢の神経は脊髄の腹側を通っており、腹側から圧迫があると後肢がふらつく。また首を長期間下におろすと動的な狭窄がおこることで後肢はふらつく。牛でもある。
<症例>
7ヶ月齢子牛。凛告は骨折ではないかということ。頭はしっかりしている、前肢・後肢ともにつっぱりぎみ。Dの頚椎前部の異常が考えられる。
剖検:樹突起が先天的に形成されていないため環椎・軸椎間の脱臼が起こりじわじわと圧迫されたためなかなか症状がでなかったと思われる。じわじわくると症状が出にくい例として面白い実験がある。猫の椎間板に木ねじをじわじわといれていくと85%でも大丈夫。しかしいきなり動いたりすると駄目になる。
<症例>
種雄で腰がたたずナックリング。T13、L1、L2にかけてブリッジ形成。変形性脊椎症。
外に出した際がけからおりたりすると鼓骨で圧迫骨折がおこることがある。
<臨床診断のコツ>
@ 余裕を持つ
A 情報:品種、年齢、性差など
B 望診:凛告だけに頼らず自分でしっかり見る
C 全身:肢端検査、見落とさないようにする。
D 主な観察項目のチェック
E 跛行診断のポイント
F 疾患の特異的症状
<主な観察項目>
@ 体型の変化
A 体表静脈の怒張
B 筋萎縮
C スタンスと姿勢
D 肢端の状態
E 腫脹の有無
F その他
<跛行診断の要点>
@ ストライドの逸脱
A 痛みが顕著な跛行か?
B 疾病に特異的な跛行か?
C 疾患部位に特徴的スタンス
D もっとも近い跛行域をえる
<特異的跛行とは?>
@ 筋萎縮例:慢性?
A 関節肥大:外傷・感染性
B 関節浮腫:腫瘍、膿瘍、菌
C 外傷例:骨折?→開放性か非開放性か?
D 異常姿勢:神経、靭帯、筋
E 四肢変形:脱臼→仙腸骨関節脱臼
F その他
<跛行診断法>
@ 臨床診断:跛行域の決定
A 神経ブロック:肢の近位、遠位
B 関節液検査:感染性、免疫介在性
C 関節内麻酔:まれ
D X線検査:最も大事
E 関節鏡検査:まれ
F MRI検査
G 滑膜の検査
蹄の異常の中でも蹄底潰瘍は特に治療費が高くつき肢跛行の2倍、趾間跛行の4倍ほどかかる。
霧島第一牧場の牛は山に放牧しているため2重蹄になっており、潰瘍を起こしやすい。外傷性で深部感染するものもある。治療するときは徹底的にやらないと駄目。下駄をはかせ、ない場合ギブスなどで代用する。さらに爪をけずったりして絶対に悪い部分で負重させないようにする。見た目にはでなためそれを説明できかつ治療できる獣医の技量が大事になってくる。またそういうものを直すことで農家から信用されるようになる。
まとめ:蹄病は治療よりも予防が大切。悪くなってからでは遅い!!!
削蹄しないといけないが削蹄師が少ない現状。
Q:趾間にカリフラワー状のものができ焼烙したら跛行、神経症状がでてきた。いったいどういうことだろうか?
A:上行性の感染ではないですか。もしくは肉芽が出ているためでは、ブロメラインで溶かしてみてはどうですか?
Q:いえ外見上はきれいになっていた。
A:異常な状態になれていたため、正常にもどったら逆に関節へ負担がかかっているのでは?
<子牛の慢性関節炎、骨髄炎の併発に対する強酸性水による関節洗浄>
牛の慢性関節炎の治療は時間はかかるが効果がいまいちな場合が多い。しかし将来性のある子牛の場合徹底的にやればいけることもある。
機能水、強酸性水:ph2.0以下で有機物に触れるとその活性を失う。リンパ球、生体組織への影響が少ない。関節内へいれっぱなしはよくない。
症例:2ヶ月齢、黒毛和腫、雄、60kg近く、1ヶ月前より跛行、手根部の熱感・圧痛・腫脹、抗生物質9日投与、ステロイド剤注入(初日)
X線:手根関節中央から内側にかけて軟骨組織の腫脹と骨破壊の見られる関節炎が骨髄まで侵入している。
一般検査:全身良好、右手根部熱感
臨床診断:骨髄炎を併発した難治性の細菌性関節炎
関節切開洗浄:キシラジン麻酔。関節切開。関節内よりクリーム状の膿瘍。鋭ヒを用いてきれいに洗浄。大量の強酸性水で関節洗浄後洗浄液を回収。ドレインを挿入し圧縮包帯でカバー
経過:2〜3日ごとにドレインで洗浄し包帯を交換する。抗生物質は2週間投与。廃液は3日後に透明、5日後には少量となる。1週間後ドレインを除去。2週間後は著変なし。1ヶ月後に退院。
発育状況:9ヶ月で250kgで市場へ。肥育用牛として45万円で購入された。
考察:強酸性水と抗生物質による洗浄、治療でよくなる。関節炎や骨髄炎は初期の治療がもっとも大事。
<症例>
川の中で骨折した牛がいました。開放骨折で、砂が混入していました。
4〜5mmのハーフピンを5本クロスさせて抜けないように創外固定を行いました。
Q 筋肉までねじらないのですか?
A 基本的に創外固定は筋肉のないところでします。筋肉によって曲がってし
まうので、なるべく筋肉が少ない所を選びます。
回転数の速いドリルで一気に入れ、最後は少し速度を落としてネジをとめ
ます。金属用のセメダインや、歯科用の重合脂を用いて固めます。
プレートは異物となるため、入れません。毎日洗浄を行い、様子をみなが
ら治療をします。
<運動器疾患の診断>
@ 関節の機能と構造
A 跛行診断法
B 運動疾患の特徴
C 神経疾患
<蹄について>
外蹄が伸びやすいため、X脚になり、支軸がずれてくると関節に負担がかかる。
つま先に負重せず、柔らかく、割れやすい所に負重するようになる。
Free stoll では、年に4回ぐらいチェックしなければいけません。
* 一般的日常的削蹄の基本 (治療時:洗浄後に実施)
・ステップ1
@ 内蹄の背壁長7.5cmにする(蹄冠部より測定)
A 蹄カッターで垂直にカットする
B 蹄底の厚さを5?7cmにする
C 後部の削蹄は残しておく
D 蹄底が偏平になったら蹄壁と蹄底を同じ高さにする
E 蹄角度はほぼ正常になる。
・ステップ2
@ 外蹄を内蹄と同じ長さにする
(もし内蹄が7.5cmよりも短いと同じ長さにならないが、外蹄は7.5cmにする)
A 蹄底を内蹄と同じ高さにカットする
(もし外蹄ガ内蹄よりも深かったら無理に合わせず同じでよい)
B 外蹄の蹄球部の負面もフラットにして内蹄の高さに合わせる。この部分をとりすぎると潰瘍になるので注意する
C 牛が新しいコンクリート、粗コンクリート、石の道路で歩く時は、蹄の厚さを厚くしておく
D 蹄低が軸側に横断性に延びて縁を形成するとよくないので正常になるように削蹄する
・ステップ3
@ 蹄底の中央部を削刀等で整え、軸側縁向けて角度を付ける
* 寒い時に爪が痛くなることから、“冷たい”という言葉ができた。
栄養性に爪が悪くなると蹄が柔らかくなり、蹄葉炎を引き起こす。
<フットケアの重要性>
蹄病は廃用事故の原因となるばかりでなく、次ぎのような経済的損失を引き起こす
@ 乳量低下
A 乳質低下
B 産肉量低下
C 繁殖、代謝障害
D 耐用牛
<蹄病予防のポイント>
・よく運動させる
・ 床の改善、乾燥
・ 牛を乾かす
<運動疾患の特徴>
運動器は
@ 1つの組織システム
A 恒常性の維持
B フィードバック機構
運動器疾患は恒常性の悪循環状態である
治療の原則:悪循環を切る・足すか引くか?
<田浦先生の講議に対する質問>
Q 機能水は、骨に対する悪影響はないのですか?
A すぐに機能がなくなるので大丈夫です。リンパ球が死なない程度の威力で
すし。使用する時は、一過性にドンとやらなければ効果ありません。
痛がる時があるので、液は回収した方が良いでしょう。子宮洗浄に使うと
痛がりますので、少しあたためて使うと良いでしょう。
膀胱洗浄にも使えます。
Q 腹膜炎の猫に機能水を使ったら、粘膜に水ぶくれができました。
A 浸透圧が低いと水ぶくれができます。後で生食で洗うと良いでしょう。
外側をきれいにしておいてから洗わないと汚れが中に入ります。
あたためて、ゆっくり洗うと良いでしょう。